テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

2018年上半期映画ベスト10

7月も半ばになってしまったけど、やらないと気持ちがわるいので恒例のやつ。
2018年1月から6月に劇場で鑑賞した41本が対象です。

10.激動の昭和史 沖縄決戦
あらすじ:沖縄でいかに戦いが行われ、そして凄惨だったかを岡本喜八のテンポで見せてくれる傑作。

キネカ大森にて『シン・ゴジラ』と2本立てをしており、2月に鑑賞。旧作だけど2年くらいずっと見たかったので念願叶った。
とにかく昭和の俳優の顔で画面が持つからすごかった。動の丹波哲郎、静の仲代達矢、泰然の小林桂樹。加えて岸田森加山雄三のマチズモに染まってない優男がとってもよかった。岡本喜八の戦争嫌 い、上層部嫌いがよく出ていた。
岡本喜八は『シン・ゴジラ』にも写真が出てきたけど本当にテロップとナレーションで情報を洪水のようにだしたり、編集のせっかちなテンポがとても心地よい。情報化社会になるに従って映画はカット数が増える傾向にあるらしい(ジョージ・ミラーがマッドマックスも1からFRで半端なくカット数増えたと言ってたのをなんかで見た)けど、岡本喜八とか市川崑(つまり庵野さん好みの監督)は昔でもチャキチャキしててすごいと思う。『日本のいちばん長い日』と合わせてみると屋内と野外、中央と現場それぞれの戦争末期が見られるのでオススメ。

9.花筐
あらすじ:唐津の男たちの熱烈なブロマンス、青春、戦争。

これも公開は去年だけど三月にポレポレ東中野でやってたので見た。
大林宣彦監督は『この空の花』から劇場で見始めて『野のなななのか』もみたし、これも含めて戦争三部作ということになるらしい。商業映画デビューの『HOUSE』も目黒シネマでやってたのを見たが、まったく予想しないところから戦争の話が入ったり「僕はずっと戦争の映画を撮ってきたから特別これが戦争三部作ではないです」と仰ってるのも頷ける。
時制が戦前の唐津から動かないおかげで話がわかりやすいし、近年で一番面白い上に映像もヤバイという大林宣彦まじ神がかりだわという作品。裸で2人で馬に乗って夜の浜辺を走るシーンは暗喩や比喩を超越したラブの描き方で照れとか恥じらいがなくて感動した。
いま尾道で最新作を撮っているらしい。

8.孤狼の血
あらすじ:昭和63年、架空の広島を舞台に繰り広げられる東映△マークに波濤が砕ける“あかんヤツら”の警察ヴァイオレンス!!

企画発表からキャスト公開まで常に注目してた映画がちゃんと面白いということはあまりなく、そんな中で公開日に見に行ってめちゃくちゃ面白くて気持ち言葉遣いや目つきが荒々しくなった、生活や人生に影響を及ぼすレベルで面白い映画。
仁義なき戦い』や『県警対組織暴力』の頃よりも韓国映画的ヴァイオレンスや男同士のブロマンスが特盛されており、不良性感度ビンビンの東映という感じで血が滾る。松坂桃李くんの広島弁がかわいい。昨日始まった『この世界の片隅に』でも広島弁だった。ヒロインの阿部純子さんがドいいので好き。続編製作進行中らしいので生きる希望がある。
これについては個別にブログも書くくらいハマった。

7.ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル
あらすじ:いま一番脂の乗ってるロック様と『ジュマンジ』の融合というとにかく楽しいゲームムービー。

そこまで期待してなかったのにとても面白くてニコニコになった映画。毎週末これを見たいと思える作品。
ゲーム映画のいい所はトライ&エラーを視覚的に表現できるところで、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も同じように好き。試練を乗り越え、仲間と協力して、現実世界ではできなかったことがゲームの中で克服できるというのがわかりやすく楽しく描かれるので見てて楽しい。ゲームと現実は別モノかもしれないけど『ジュマンジ』で認識と行動の主体だったことは現実にも作用するわけでなんか勇気を貰った。

6.スリービルボード
あらすじ:3枚の看板にまつわる、3人の怒りと赦し。

今年見た映画の中で一番見ててゾクゾクして脚本賞とると思ったのにオスカー貰えなかった不憫な傑作。本当に語り継がれるレベルの作品。展開の予想をしてて、それが100%いい方に裏切られるので段々前のめりになっていく。
元々劇作家のマーティン・マクドナーが監督脚本だけど絵で見せる演出がめちゃくちゃ上手くて、例にあげるなら虫をそっと助ける寄りのカット、看板の表と裏で見え方が違うカット、火と怒りが呼応してる各カット、ダイナーの背中合わせのカット、ストローを向けてあげるシーンとかとか。
本当に物語ること、怒ること、赦すこと、赦されることなど普遍的なテーマを並々ならぬパワーで表現されて心奪われる。

5.ブラックパンサー
あらすじ:王様と王様になれなかった男のみる夕陽。

マーベルスタジオは本当に映画を作るのが上手くてびっくりする。ヒーロー映画を20本以上作ったら味が同じになりそうなところを、ヒーロー映画にブラックスプロイテーション、故郷、父親の罪滅ぼしなどなどの諸要素をいれてまとめあげるので本当にすごすぎて面白い。
クリード』のライアン・クーグラーが「俺の撮るマイケル・B・ジョーダンは推せるだろ??」とほくそ笑んでるのが伝わってくるところも好き。「おれは過ちじゃない」というのは『クリード』のセリフだけどもほぼキルモンガーのテーマもここにあり、主題の反復という作家性の発露としても面白かった。ルドウィグ・ゴランソンのスコアもアツい。大きなものとしての国、王、ヒーローが結局夕陽を見つめるというスケールの小ささに収斂するのがかっこよくて好きだった。

4.バーフバリ 王の凱旋
あらすじ:命を与えるのが神 命を助けるのが医者 命を守るのが王族だ

男の中の男、幻想としての家父長制の権化バーフバリ(主にアマレンドラ)の活躍に心が踊るしかない。こういう伝説的な人物を描けるという点においてフィクションは素敵だと思う。現実は辛いけどフィクションは偉大。
貴種流離譚という古今東西どこにでも転がり、スターウォーズさえその型から脱却しようとしている話型をこれでもかと熱く濃く太く描く骨太アクションスペクタクル大河ロマン。
とりあえず見たら生きる気力が湧くという意味で大切な作品。

3.アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
あらすじ:10年かけてお膳立てされた壮大な悲劇。

2時間なら2時間でここではないどこかを感じさせてくれる映画もあるけど、10年というスパンで世界を構築してその集大成がまじで半端じゃない完成度で面白いとかほんと意味がわからない。
膨大なキャラそれぞれの見せ場をきちんと用意するために意外なチーム分けをして、新たなリレーションシップを描くとか本当に考えた人頭良すぎる。
情報量が多くてひと時も退屈しない。
一人のエゴという意味においてヒーローとヴィラン紙一重だし、他人を救いたいという行動原理もほぼ同じでやることが本当にえげつなくてなんかもうよく分からない。1人では受け止めきれない映画だった。親しい友人や肉親の訃報を聞かされた時みたいな、世界が止まる瞬間が味わえる。

2.レディ・プレイヤー・ワン
あらすじ:スピルバーグが本気を出してオタクを殺りに来たと見せかけてただのジョブズとウォズニアックの同人誌。

予告を見た時に面白そうとは思ったものの、ごちゃごちゃしてて大丈夫なのか?とかウダウダしてたのに見たらアウアウアーになってしまった80'sスピリット溢れる傑作。アラン・シルヴェストリの曲がニクい。オリジナルなものがなくなって、既存のものの配合ですべてが生まれるポストモダン的な世界観というか、わかりやすい社会の二文化とそこに生きる主人公のもう一つの現実としてのオアシス。
ジュマンジ』の時にも書いたけど仮想現実も現実も認識と行動の主体としての自己は一貫しているわけで、リアルと非リアルがわかりやすく対立しているわけではないと思うが、そこはそこ、映画なのでわかりやすくなっています。
めんどくさいオタクみたいな難しいことをアレコレ考えるよりもとりあえず出てくる版権キャラと登場のケレンみで涙が溢れる。
アルテミスに傷ができるところが好きすぎてブログも書きました。
これと『ペンタゴンペーパーズ』を同時に撮るスピルバーグほんとヤバイ。

1.ちはやふる 結び
あらすじ:一瞬の青春が千年先まで届く気がした、無限未来を僕は見た

ちはやふる 上の句』は東京に出てきてはじめて立川シネマシティで見た映画で、それから3年、瑞沢高校かるた部も1年生で創部したところから3年生になっており、現実の時間と映画内の時間が同期していて、その三年の間にかるた部の面々が役者として確実にパワーアップしているからこその地力の上がり方、関係性の煮詰まり方にフィクションや作り物以上の情熱を感じて冒頭からずーっと泣きながら見ていた。青春の終わりという描くには危ういテーマを扱いながらもそこから逃げずに真っ向から悩み、考え、戦う劇中のカルタに自分の3年の東京生活を重ねてエンドロールのあとしばらく立てなかった。
キャスト一人ひとりが本当に輝いていてすごい。
漫画原作、2部作のあとの完結作でここまで綺麗に新キャラと既存キャラが上手く溶け合ってる作品はもう生まれ得ない気がする。
キャストがこの瞬間に揃っているからこそ出来たんだなと思った。10年代の映画、青春映画、漫画原作映画などなど『ちはやふる 結び』に付属するラベルの中で一番光り輝く大金星だと思う。僕には眩しすぎるくらいに。

結果
1.ちはやふる 結び
2.レディ・プレイヤー・ワン
3.アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
4.バーフバリ 王の凱旋
5.ブラックパンサー
6.スリービルボード
7.ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル
8.孤狼の血
9.花筐
10.激動の昭和史 沖縄決戦

講評
ベストには入れそびれたけど『シェイプオブウォーター』も好きでした。傷にまつわる話に弱い傾向があるのですが、ベストだと満足度や満腹感で選ぶので選外になりました。
やはりマーベル系は強い。今年はまだ『アントマン&ワスプ』があるので恐ろしい。
アントマンだけじゃなく『ジュラシックワールド2』『ミッションインポッシブル フォールアウト』など2015年以来の続編ものもあり下半期も楽しみです。
前は最寄りの映画館まで10分だったのに、実家からだと40分-2時間かかるので下半期はどれだけ見れるか分かりませんが頑張りたいです。
『カメラを止めるな』とか『菊とギロチン』とか東京にいたらすぐ見に行ってる話題作が見たい……。夏は暑くて嫌だ。



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