テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

見たぜ!青年団『日本文学盛衰史』

もう夏の日差し。

吉祥寺シアター青年団日本文学盛衰史』を見た。めちゃくちゃ面白くてアフタートーク平田オリザに質問もしたし、台本買って握手もしてもらった。

高橋源一郎はわりと好きな作家のはずなんだが、『さようなら、ギャングたち』も『ジョン・レノン対火星人』も途中で挫折している。『日本文学盛衰史』もほしい物リストにはもう4年は入っている。
尾道にゆかりがあったりして好きは好き。橋本麻里さんのお父さんだし。
平田オリザは演劇を初めた三年前に読んだ『演技と演出』という新書が大層面白くていつか青年団の舞台を見ようと思っていた。

そこにきてこの4月に情熱のフラミンゴの『LOVE BATTLE FIELD』を見た時のチラシにこれのが挟まっており、ムムム!となったので即チケット取った。

めくるめく文学を、新たなる散文を手に入れようとする人々と現代口語演劇を獲得・発展させてきた青年団がオーバーラップして、すごく楽しい青春群像だった。
参考文献に挙がっていた関川夏央谷口ジローの『坊っちゃんの時代』という漫画がすごく好きで、これは二葉亭四迷の葬式で漱石や鷗外が挨拶したりするのだけどそれに倣ってか北村透谷の通夜、正岡子規の通夜、二葉亭四迷の通夜、夏目漱石の通夜を幕ごとの舞台に進行する。 島崎藤村田山花袋は通してずっといて、入れ替わり立ち代り色々な文学を志す人たちが来る。みんなチャーミングだった。石川啄木が「ぼくは泣き虫で生意気なんです」といったり細かいネタが多くて楽しい。
本来は縁もゆかりもなかった人を故人とのつながりで一堂に会させ、思わぬ会話をするというパスティーシュの面白さはオタクの大好きなヤツ、ぼくは『ドリフターズ』で高校の時にそれを知りましたね。
『月に吠えらんねぇ』というマンガも明治の歌人詩人文豪が出てきて好きなのだけどそれに近いものがあった。

歴史上の人々を史実の偉人として表現するというよりは、生活感のある言葉の中で生きているように描かれているのがいわゆる口語演劇の楽しいところだなと思う。時事ネタをぶっ込んでるのは原作由来らしく、LINEやTwitterが出てくるわ、紀州ドンファンは初日にセリフに入れたらしい。日々アップデートされるの、いいね!
時事ネタが奇抜に見えたのは最初だけで、要は当時の風俗や噂話として彼ら彼女らがしていた会話の生活感を回復するための心配りだなと思う。これがNHKの大河とかだったら色々文句もあろうが、そこはそれ演劇は自由なのである。
平田オリザだけあって、演劇史的な部分、坪内逍遥島村抱月、おまけに伊藤野枝平塚らいてうまで出てきてこの1月の『美しきものの伝説』に漸近する部分もあり、キャラの描写の異同が楽しかった。アフタートークで質問したのは「『美しきものの伝説』も同時代を描いているが、先行作品はなにか意識したのか」みたいなことで、きけば「日本演劇盛衰史をいつかやろうと思ってとってある」らしい。
楽しみぜー。

『LOVE BATTLE FIELD』に客演ででてた兵藤公美さんが夏目漱石宮澤賢治をやっていてキュートだった。
僕はなぜか正岡子規が「あしは身体が弱いけどもっと生きてたくさん書きたい」みたいなことをいうところで泣けてしまい、そこから子規の愛され方に無性に憧れてしまった。
“世の人は四国猿とぞ笑ふなる 四国の猿の小猿ぞわれは”
という子規の歌を初めて聞き、ああ僕の歌だなとまた勝手に投影してグッときた。
森鷗外も津和野だし、石川啄木は岩手だし、宮澤賢治もそう。田舎もんにこそ文学は宿るんかもしれんな。そういうのが好きです。漱石は東京の人だけど。

盛衰史とつくだけあって、話は過去だけでなく現在と未来まで射程に入れてとても、いい。
よりにもよって青年団らしくない芝居を初めてで見たらしいがとても好きだった。


言葉の力を大切にせんといけんなとおもう。
演説セリフ、説明セリフに負けないぞ。説明演技に堕さないぞ、と思う。

暑い夏、もっと熱ぅしちゃるけんな。