テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

読んだぜ!井上ひさし『天保十二年のシェイクスピア』

二年くらい前から名前だけは知っていて、興味はあったものの、戯曲を読むという習慣がないばかりに読まないままだった作品。
近頃やおら興味が勃興したのでAmazonで古本を頼んだ。

定価680円のものを1500円くらいで買ったのはかなしみ。新刊書店ではおめにかからなかったのでしゃあない。
でもメチャメチャ面白くて読みやすかった。
三島由紀夫が“小説は散歩する文学、戯曲は舞踏する文学”みたいな言葉を残したと聞いたことがあるが(ソース未確認)、まさに楽しいダンスであった。ミュージカルではないけどダンサブルというか、リズムとテンポが気持ちいい。電車で読んでたのに、自然と口が動き出してしまい、声を出さないようにするのに気を使った。
井上ひさしは中学の頃に『吉里吉里人』を読んだり、『ブンとフン』を読んだりしてたが戯曲は講義で読んだ『紙屋町さくらホテル』くらいである。
すごい作家だなと思う。嫁を殴ってた男はやっぱり尋常じゃない言葉を発明するなーと感心する。
DVしてても作家として大成したら不問に付される感じは気持ち悪いので、そこはつついていきたい。
天保の昔の無宿渡世の人たちのいがみ合い、元々は侠客講談をベースにしてるからなのか、男が下ネタをよく言いがち。言葉遊びとして面白い部分もあるが、作者の女性観がモロに出るのでうわぁ……とはなった。まぁ普段口に出せない卑猥な言葉を叫べるのが演劇の楽しいところでもあるのでいいけど。
九条の会』で社会の資料集に載ってた井上ひさしだけあり、所々反権力というか思想的なところが見てとれて面白かった。主役格佐渡の三世次が抱え百姓から出世するあたりの成り上がりの面白さと百姓へのまなざしとかね。

シェイクスピア37作品のすべてを網羅的に登場させる、という大前提によって『リア王』になったり『ロミジュリ』になったり『マクベス』になったり『ハムレット』になったり……。パスティーシュやオマージュ好きなオタクとしては興奮する作品。脇役も原典では主役なので、華がある。
シェイクスピアっぽい長口舌な比喩もあり、ヤクザものの荒々しさもあり、歌あり踊りあり、楽しい。戯曲読むのが苦手なのは、舞台に立ち上がったもののほうが面白いという漠然とした思いがあり、文字だけ読んでもあまりグッと来ないからである。ところが、この作品は読むだけで十分面白く、YouTubeに出てる断片を見るだけでも舞台が面白そうなのがわかる。

いつか自分もやってみたいなぁ。
きじるしの王子なのできじるしの王次やりたいです。なんつって。