テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

さくやこのはな

今日は新宿御苑に初めて行った。

行く前に観光客と思しき30代くらいの男女のカップルがすいませーんと声をかけてきた。スマホを見ながらここに行きたいんですけど、といっていて見ると御苑の方にいきたいらしい。近くなのは分かったけど僕も行ったことがないので「Let me show you」と小六の時に習った英語で案内することにした。ちょっと行けば標識が見えたのでカップルは嬉しそうに笑ってバイバイすることになった。「Have a nice day〜」とか調子乗ったこと言えたので嬉しかった。たぶん中国か台湾かシンガポールか、アジア系の2人だった。
人に道を聞かれる人になりなさいというのを気に留めていて、それなりに身綺麗にはしているのだけど、最近は春なので目つきが悪く音楽を聴いてやや揺れていたので結構声かけられるのにも面食らった。頭がぐるぐるになるので大きな音で音楽を聴いてストレスを感知できなくしているのだが、まさか話しかけられると思わず、話しかけられたら妙に嬉しくてニコニコしてしまった。
春だからなんかブツブツ言ってる人もいるが、よくみるとハンズフリー通話だったりする。ぼくもイヤホンしながら奇声をあげれば運良く好意的にスルーしてもらえるかもしれない。

御苑に行く前に用事を済ませてウロウロしていたのだが、そういえば先日舞台を見に行く時に高校の同級生の男子とこの新宿2丁目の横断歩道を渡ったことを思い出していた。
その時、本当に無意識にやや距離をあけて歩こうとした自分がいて、今更ながら恥ずかしくなった。前にこの2丁目の交差点をいわゆるベア系の男性ふたりが仲睦まじく歩いているのを見て、お、土地柄〜と思い、自分と友達もそういう風に人から見られるのだろうか、僕は人より細面だからなーとか無意識の中に思ったらしく、普通に並んで歩けばいいのに距離を取ってしまった。
さっきは海外の人に優しく対応出来て、多様性とかよく言うてるわりに、新宿2丁目を男ふたりが歩いてることにはまだ自分でも抵抗を覚えているというその事実がめちゃくちゃ恥ずかしかった。
キアヌ・リーブスがゲイなんですか?とインタビュアーにきかれたとき「それを否定することに意味を感じないので否定も肯定もしない」的なことをいっていて感心した身としては、そういう障壁を補強するようなことに無意識的に手を貸しててなんか申し訳なかった。偉そうなこと言うても大したことないな、みたいな。
自分がどうこうとかじゃなくて、自分も知らないうちに他者を抑圧してたんかーと気づくとなんかやるせなかった。

新宿御苑はマジでやばかった。
都心にぽつんと出現してしまった人工の楽園で、空が広い。もう桜が咲いていて写真を撮る人が沢山いた。岡山の後楽園が好きだったけどあれよりも更にでかかった。怖くなったのですぐベンチに座ってぼーっとした。都会の人混みに囲まれているとせせこましく肩がぶつかるわりに孤独感をよく味わう。御苑のだだっ広いなかに楽しそうな表情の人がいるのを見てると離れてるけど妙に居心地がよかった。やはり人間には広場が必要。昨日の能に続いて自然はいいねぇという気持ちになる。
新宿ではないけど駅前で桜が咲いているのをみて、びっくりした。なんだこれ??って素で思ってしまった。大きな無機的建造物の麓に枝は細くて花は小さい、けれど鮮やかな桜があってびっくりする。建物は変化しないけど植物は変化していく。その対比が妙に焼き付いた。

新宿までなにしにいったかというとまたDVDを売りに行った。血肉になった作品たちだから仕方ないか、と思いながら所有欲を手放すとやや気持ちが楽になった。こだわらなければまだまだ生きていけるなと思った。
うちの祖父は京都で修行していたころ、托鉢という行をやっていた。鉢をもって家を訪ねて喜捨(ごはんとかお金)をもらうやつだ。やってることは乞食的なことなのでお願いするとあまりいい顔はされなかったらしい。それでも京都なので土壌があるからか、大事にしてくれるところもあるらしい。
社会に余白があると僧とか修験者が生きていけるんだなと思った。東京も無駄に人が多いので僕が増えても関係なく世界が回ってくれる。いなくなっても同じならもうしばらくいつきたいと思う。新宿御苑も都市の余白みたいなもので、もちろんガチガチに整備されてるから快適なのだけど自然なくしてはやってらんねぇなーと思う。

帰りにポイントを使ってちはやふる結びをみたら、今年一番泣いてしまって、めちゃくちゃ感動した。
とにかく映画としてよく出来てる上に、役者の実年齢の2年と続編劇中の役柄としての2年がシンクロして、スターウォーズのハンソロとかルークが40年かけた時間というスペシャルエフェクトがかかっていてどのキャラも魅力的だった。今日は眠いのでその話はまた。マジでワンカットごとに褒めるとこしかない。

おやすみなさい。