テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

2018-02-22の猫の手も借りたい猫の日

今日は小雨で寒かった。人混みにまぎれたせいかいま咳をひとつふたつしてしまい、足湯をしている。

昨日、『激動の昭和史 沖縄決戦』『シン・ゴジラ』の2本立て。
今日、『花の生涯梅蘭芳』『始皇帝暗殺』のチェンカイコー特集を見た。
情報量が多すぎて脳がバカになっちゃう。しかも2本立ては1000円だし、特集の方は無料なのでコスパの計算もバカになっちゃう。
語りだしたらたぶん一晩は行ける4本だけど今日はとりあえず川村毅作『大市民』をみたのでそのことを書く。

『美しきものの伝説』でも大衆という言葉について大杉栄が熱弁をふるうシーンがあった気がする。大市民でも、しょしょしょ庶民みみみみ民衆などへんなミュージカルナンバーに乗せてそれらの言葉を掘り下げる。
無辜(むこ)の民というワードが結構ちらついた。イノセントであるが罪深いイメージもある。名前はあるけど顔はない、空気という時吸ってるもの、総称名詞としての市民。
冒頭わらわらと群がり剣玉に勤しむ人々。穴に入れるか皿に載るか、目先のことにばかり集中している。
そこにデウスエクスマキナよろしく預言者が現れ、彼らをキリンだと呼ぶ。餌を得るために進化した長い首。その長い首で敵からすぐ見つかってしまうキリン(実際のキリンはライオンも蹴散らすらしいが比喩としては詩的だ)。

度々「なんじゃこりゃあ」と絶叫したり、客席にやってきたりメタ的で観客の安寧を許さない作品なのも面白かった。見てるこちらが(あー変な作品なんだなー)みたいな諦めを持ちはじめたら「なんじゃこりゃあ」という真っ当な疑義を宣言してくれるので目を覚ましてくれる。他にも明らかに日曜夕方の顔、某磯野家そっくりの家族が出てくるのも面白い。
日本人のほぼ全員がその名前と家族構成を知る彼らはそのまま市民の象徴で、一見団欒や絆が見てとれるがカメラが回ってないところではそんなマンガチックではいられない問題が飛び出す。
もう1つの軸は貧乏人と成功者。資本主義の権化の成功者と人生に絶望する貧乏人。『ミクロの決死圏』というか『ピノキオ』というか『ブレードランナー』というか絶望していた男がやがて希望を取り戻すまでの話なのかもしれん。

かわいいかわいい猫たちはそのまま自由の象徴で好き勝手に生き、構われたがる。縛られる人間と縛られない猫。
風営法に触れない猫風俗。人は人のままでは安らぎを得ることを許されない。

全員野球というか登場人物が多くてとても楽しい。僕もやりたい。
勢ぞろいした人間は一個の軍集団として強くなるなーと思う。インターナショナルのシーンの脆さもまた人間。

ラスト、大団円を迎えて花火が打ち上がり、あーよかったと思うと戦火の音になる。彼らは後ろを振り返るが、そこにあるのは……。
変な戯曲でとても面白かった。変は変でもゴドーとかより断然わかりやすい。



簡単になるが上の映画たちのことも書いておく。
沖縄決戦はシン・ゴジラ庵野監督が大好きといっていてこの一年半ずっと見たかった。TSUTAYAにも置いてないしDVD買うかー?まで迷ったがここに来てスクリーンで見れるとあり、駆けつけた。情報量がやばい。岡本喜八監督のせっかちなリズムで小気味よく沖縄の絶望の道程が示され、ひたすら人が死に、爆発する。これを見たら沖縄を観光地だと思えない。まだ行ったことないけれど行けた暁には掌を合わせにいきたい。修学旅行ではないけどそういう日程にしたい。ぼくは広島の人間なので原爆についてなら他県の人より資料館にいったりして知っているつもりだが、沖縄のことはなにも知らなかったんだなと思った。知ってたつもりだけどこの映画を見てどのくらいひどかったのかが、やっと分かった。僕は映画にしてもらえないと消化吸収できない体質なのだろうか。
映画は政治的なメッセージを打ち出すだけだと説教臭くてみれなくなるが、そこはさすがの岡本喜八、エンターテインメントやユーモアを交えながら純粋に面白いので本当にすごい。宮崎駿押井守の戦争嫌いのミリタリー好きに近いものを感じる。
市川崑しかり岡本喜八しかり、庵野さんの好きな監督はカットの重ね方がわかりやすく見て楽しい。
シン・ゴジラは公開版じゃなくてブルーレイなのかな?と思った。モノレール基地のシーンの音がキレイだったので。

花の生涯は実在の京劇俳優の話。一言で言えば『女の一生』の京劇俳優版。女形の人だけど「誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩き出した道ですもの」感が胸に迫る。
始皇帝暗殺は頭がおかしい映画。こんなものが作れるなんて、万里の長城とかピラミッドとかと同じ規模の建造物だと思う。為政者ではなく映画監督がそれを可能にしたかと思うと中国の人は懐が深いのかどっかイッてるんだと思う。『キングダム』好きな人はサブテキストとして見るのもオススメ。合戦シーンの実写化じゃん!となったよ。


背中にカイロをはってねたら風邪をひいてなくてよかった。
この半年できなかったインプットが、たくさん、しかもお安く出来たことがかなり嬉しい。見たり聞いたりしたものは、茶碗ではなく粘土であってそれをどう捏ねて価値を付加できるかが大事というか、おれ〇〇と友達なんだよねーというやつにろくな奴がいないように数は自慢にならない。ぼくはたくさん見てたくさん書きたくさん褒められたい。
よろしく哀愁