テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

有安さんに思うこと

2018年1月15日。ももクロの緑こと有安杏果が「普通の女の子の生活」を求めて引退する。1月21日のライブでお別れらしい。

高校時代からももクロにハマり、大学時代には何度もライブに行ったりした僕はかつてモノノフといわれるファンだった。
かつて、と書いてしまったのは以前ほど熱心に情報を追わなくなってライブに行きたいという欲求が薄れてしまっているからだ。
ちなみに推しはあーりんです。僕は自分のことをかわいいとわかってるナルシストが好きなので。

アイドルというのは代理戦争だと思う。
楽曲制作をするミュージシャンは自分では歌えないけど素敵な曲を書くし、ファンは物語を共有して我がことのように泣いたり笑ったりし、アイドル本人は大きくて美しい器だと思う。いわゆるシンガーソングライターではないし、そういう創作的な夜更かしをする能力よりも早寝早起きしてハツラツと踊れる能力の方がアイドルには向いている。

僕がももクロを最後にライブで見たのは2016年の春の一大事、ヤフオクドームでのことだった。
4月から東京で役者のはしくれになる直前、岡山から引っ越す前に博多までいって大学時代の先輩とライブを楽しんだ。
楽しんだし、『行く春来る春』で泣いたりしたのだが、ただどうしても消しきれない気持ちが芽生えていた。
なんで僕はあそこに立ってないんだろう、と思った。
なにを馬鹿なと思うかもしれないが、その年の1月に舞台に出てからの僕は自分の人生がようやく始まるという高揚感に包まれており、ももクロを見ながら嫉妬するというへんてこな状態になってしまったのだ。
いわゆるももかなこ世代、1994年度生として同世代のアイドルに楽しませてもらって憧れて笑顔にさせてもらったのだが、ことここに至って僕は僕の戦争をしてみたくなっていた。代理戦争ではなくて、モニターのこちら側じゃなくて、痛みや苦しみと興奮のないまぜになったあちら側に行ってみたいと感じた。
別にアイドルなんだから楽しく気分転換や日常の彩りに聞いてはいけるのだが、それでもサイリウムを振る熱狂やコールを叫ぶ情熱は自分の人生の兵站として転用されるようになったのである。


前置きが長くなった。
有安さんがももクロを辞めることは驚きでしかない。
辞めることは自由であってほしいし、本人の人生だから本人に選択権があってほしい。4人になるももクロにも普通の女の子になる有安さんにも幸せになってほしい。
ただ僕が望んだところで手に入らない居場所を手放してしまえる傲慢さにはヤキモチを焼く。
いまは身体的にも精神的にも健康から遠く離れた状態の僕は、居場所を失う危機感に日々怯えながら暮らしているから間違っても辞めたいとは思わない。周りの人が役立たずだなコイツと思ってそうで辞めた方がいいのかな、とは思ったりするが、14歳から憧れた身の程知らずな野望を半年の体調不良で手放せるほど僕は頭がよくない。
ましてや22年間やってきた生活を手放して普通の女の子の生活をやってみたい、なんてなんという贅沢だろう。もちろん子役のときからももクロ加入まで紆余曲折があり、度重なる病気との戦いや本人の性格とアイドル的振る舞いの乖離は苦痛を伴うものだったかもしれない。だけどなにかを表現すること、特に歌を歌うことに生きがいを感じていたはずの有安さんがそうやすやすと歌うことを諦めていいのだろうか、と思う。
ももクロを辞めて歌手になる、というのが難しい状況なのかもしれないから引退なのかもしれないし、本人の中の葛藤や運営側の戦略を十全に把握することは出来ない。
だけどこうしてブログを書いて全世界に発信したり、まがいなりにも舞台に立って拍手に酔ったことのある身としては歴戦の勇者が戦いの場から去り、勇名すらもなかったことになってしまいそうなのがとても悔しい。
戦うことに疲れてしまったのかもしれない。人一倍他人の反応を気にする有安さんのことだからきっと想像以上に頑張ったのだろう。
だから休んでみてほしい。ももクロの活動を休止するというのも本人の中では違ったのだろう。休んだところで戦線に復帰する確信がなかったのかもしれない(こう書いててやや怖くなったが僕は復帰するからな)。もう戦うことに満足してしまったのかもしれない。
普通の女の子の生活だってきっとゆるやかな戦争だと思うけど。【1/20追記:ミューコミで「疲れた」という発言が出たのがやっと血の通った本音が漏れた気がして嬉しかった。】

2014年3月15日。国立競技場で有安さんの誕生日を緑のサイリウムを振りながら祝ったものの1人として僕はあなたのことを忘れてあげない。なにかを表現したり生み出したりできる人間はきっとそうしなければ生きていけないから、ちょっと普通とは違った生活になると思います(普通とは、については掘り下げません。PerfumeDream Fighterをきいてくれ)。
有安さんのことにかこつけて自分語りをしてしまう僕もなんらかの戦争の病理を抱えてるのだと思う。


うだうだ書いたけど有安さん本人の、4人になるももクロの、ファンの人たちの、わだかまりがいつかほどけて幸せが普通になる日を願って今日は終わりです。