テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

わたしが愛したキングスマンは二度死ぬ

※この記事は「キングスマン」「キングスマン ゴールデンサークル」のネタバレおよびグチを含みます。

今日は楽しみにしていた『キングスマン ゴールデンサークル』を見に行った。
2015年の1作目も公開前からとても楽しみにしており、公開日にスーツに傘をもってオールバックをキメて見に行き、見るドラッグのようなケレン味溢れる映画にとても興奮した。見た9月当時はその6月に見たマッドマックス怒りのデスロード以来の興奮と満足度を友人各位に絶賛し、ある人には布教に成功し、ある人には合わんかったわーと言われた。

その時はなぜ合わないんだろーと思ったが、今日ゴルサーをみてつくづく合わなかったので今日はその気持ちを表明します。

・『キングスマン』の好きなところ
まずはすべてのはじまり『キングスマン』の良いところをおさらいします。
スーツを着たコリン・ファースがアクションをする、という企画の面白さや調度品やガジェットの英国式インテリジェンスに感じるセンスの良さ、「マナーが人を作る」と生まれにこだわらないところを表明するくせに攻撃方法はいたってマナー違反などなどお行儀の良い格好でお行儀の悪いことをするあたりがとても倒錯的で面白いと思います。
わけても僕が好きなのはエグジーという青年がハリーという大人に出会って人生を好転させるところです。集合住宅で母親の恋人にイライラしながら、幼い妹のために逃げ出すことも出来ず燻っていたエグジーがキングスマンになるべく運命に立ち向かっていくというくだりは王道としてとてもよいです。スターウォーズも常に1作目は田舎の何者でもない存在が運命に激突するプロットを辿るのが好きなのですが、これは僕のツボなのでしょう。
更に1作目はマシューヴォーンお得意のリクルート&トレーニングという描写が入ります。『X-MEN ファーストジェネレーション』でもチャールズがミュータントの若者を集めてお屋敷でトレーニングに励む姿は努力が直線的に報われる作劇もあってとても気持ちがいいです。基本的にマシューヴォーンという人は気持ちいいことを撮るのがうまく巷では最大手サークルといわれます。同人的、やおい性感度がとても高くて優秀な人だと思います。コリンファースにスーツを着せるまでは思いつきそうですがアクションをさせる発想は何を食ったらひらめくのでしょうか。ハリーとエグジーの相思相愛な師弟愛はとてもよいですね。マーリンとハリーの同僚感も頼もしい。あと『キングスマン』はずーっと『007』を監督したかったマシューくんがついにやった〈ぼくがかんがえたさいこうのスパイ映画〉なので、007オマージュが沢山ありますが007よろしく女をこますシーンが全然ないなーと見てると最後にアナルセックスをキメるので揺るぎないなと思います。キングスマン同期の女子、ロキシーは女らしさを武器にしたりせずエグジーとのよきライバルとして描写されており、そこも好きです。

・『キングスマン』のあれなところ
キングスマンというかマシューくんにハマらないという人も少なくなく、その理屈もわかります。『キックアス』で少女に殺人を仕込むのとか、『キングスマン』ではむちゃくちゃに殺していい悪役を考えて、自分は人種差別してる人間なら悪役にふさわしいと思ったのでそういう人を教会に集めて機械で操って殺し合いをさせるなんてどうかしてる発想だと思います。初見時は画面のケレン味に興奮しましたが、あとから何度かみるとたしかにこれは怒られるかもなと思いました。と同時に起こってることはすごいんだけどそこに至る動機が0(なにせ殺したくもないのに機械で操られている)なので作劇の上では特に意味を持ちません。
ここまで振り返ってみて改めて気づきましたが、キングスマンはほぼほぼポルノです。見てて気持ちよくなるように設計されており、実際気持ちいいのですが、それはアクロバティックな性行為をエンターテインメントとして見る分にはオゲレツでも品がなくても気持ちよければいいんだけど、時にお話を置いてけぼりにしてしまうのがとても悔しい。あと無自覚にポルノを作ってしまうのは才能ではなくて危ういことだとも思います。
僕は映画は売春とか逃避としての面もあるとは思いつつ、結局は現実に立ち向かうための暗がりでいてほしいと願っています。

・『キングスマン ゴールデンサークル』の好きなところ
さてようやく本題です。
ゴルサーは近年増加傾向にあるキャラ萌え映画の極北、究極のやまなしおちなしいみなし同人映画でありました。
前作のラストで幼い妹の安否を確認するよりも先にアナルファックをしたスウェーデン王女のティルディと付き合っているエグジーは立派なキングスマンとして働いています。そのティルディの家族、つまりスウェーデン国王たちと会食する際、テーブルマナーを練習しようと提案されるのですがマナーは大丈夫と答え、在りし日のハリーとの日々を振り返ります。ここ!!このシーン実は1作目でカットされ、円盤の特典映像としても収録されず場面写真のみがネット上に流れてTwitterのオタクたちを色めきたたせ続けた問題のシーンだったのです!!このシーンが見れただけでもみた甲斐がありました。
他にも強面教官だったマーリンに酒を飲ませて泣き上戸にさせたり、死んだと思っていたハリーが生きていて片目眼帯になり、なおかつ記憶喪失でやや退行しているという庇護欲を掻き立てるというか同人誌でしか聞いたことのない設定・展開じゃねえーかと驚きけしからんけしからんと言いながらその実、体は正直で興奮はしていました。

・『キングスマン ゴールデンサークル』のあれなところ
やおいというのは二次創作において作者が心地いいと思われる設定や展開を繰り広げる楽しい世界で僕も好きなのですが、それを公式とよばれる続編映画でやらかすのがマシューくんのあれなところです。それだけ自分の作った世界観やキャラに愛着が深いということの現れだとは思いますが、僕は乗り切れませんでした。
上にあげたようなこのキャラのこんな姿が見られるなんて?!という嬉しい驚きの連続はやがて飽和し、絶対に笑ってはいけない〇〇のような、唐突なもはや装置としてのキャラクターや展開が続くのでウッ……となりました。
前作でとてもいいキャラだったロキシーを冒頭のミサイルですぐ退場させる(生き残るのはエグジーとマーリンだけ)のはなんだそりゃ?ポイントですし、エグジーが訓練中から育てていたパグのJBもミサイルの襲撃で死ぬんですが、そのあと同じ犬種の仔犬を彼女が買ってきてほっこりみたいな流れも(お前は犬という機能が必要なだけなんかいや……それやったらベイマックスターミネーター2でも新しい機体が手に入ったら全部チャラなんか?あらゆるものには代わりがいるけど買ったらすぐ納得しないでよ……)解釈が違い、果てはマーリンにカントリーロードを歌わせながらエグジーのミスから地雷で死なすというのは何が起こってるのか意味がわからず呆れました。もちろんキングスマンは威風堂々の流れる中花火になって人が死ぬ映画なので人命は軽かったのですが、せめて身内には愛着をもってご都合主義的に生かしてくれてよいのではと思うし、ギャグ漫画の爆発オチみたいなノリで人を殺す癖に感動させようと演出されると情緒がついていきませんでした。ギャグで人を殺したり叩いたりするマンガだと思って読んでたら本当に人が死んでしまう気持ち悪さというか、こち亀でギャグ回とほっこり回が1ページごとにまじった上で中川を殺すみたいな(え……?)です。「先輩っ!」なんて言えない。「先輩……?!」みたいな。
銀魂のギャグ回の面白さとシリアス長編の面白さは別個でどちらもよいところですが、ノリが同じ時に混在されるとついていけません。
マシューくんは同人誌をやってるノリなのであまりこちらの情緒を気にしてくれません。
ハリーが生きてたのは特殊なジェルのお陰というのは納得しますが、それでハリーにステイツマンのエージェントを撃たせて助けてやっぱり悪役だったから殺す展開もそんな……という気分です。
てっきりステイツマンはアメリカンウェイのキングスマンという感じなのかと思っていたら、想定以上に英国のキングスマンと同じシステムの会議室などパロディーにステータスを振っていて面白いけどつまんなかった。同じ業者が施行したんか??という。悪役のポピーの方がダイナーやスタジャンなど程よいギャグ感とアメリカテイストでした。
なにより異なる組織の奴らが対立しながらやがて仲良く敵を倒す『コードネームUNCLE』(マシューくんのライバル、ガイリッチー作品)のノリなのかなー?と思ったらステイツマン大して活躍してくれないし、そこはイギリスage作品なのかもしれんけどちょっぴりつまんなかった。

あとやはり前作であったリクルート&トレーニングがなく、エグジーは葛藤や屈託もそんなになく007みたいな割り切りで任務をやっていくのでほんと??と思ってました。よくもわるくも平民のエグジーがヒーローになる所がかっこよくて当たり前に泣いたり怒ったりする人なのに007みたいな生まれも育ちも関係ない超人のモノマネをするのは食い合わせが悪いなーと思います。
トランプ当選の煽りを受けてなのか、世相をなんとなく反映したかのような排外的な大統領のシーンはほんまに同じ映画か?と思うくらい映像も安いし後のせかなー?と思いました。

好きな映画の続編が好きになれないことがこんなに悲しいことだと思わず、ついつい感想がダダ漏れしてしまいました。このブログでは好きなものがいかに好きかを表明する場所にしたかったのですが、ついつい驚きのやり場に困り、長くなりました。
オゲレツならオゲレツで、感動なら感動でとことんやり切ってほしかった。やはりこれにつきます。
ラーメンの中にショートケーキを浮かべられたような要らぬサービスとでもいいましょうか。

低気圧で頭が痛いのでこのへんで。