テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

『ヘドローバ』にネチョネチョにされたのめっちゃよかった

昨日は渋谷アップリンク小林勇貴監督最新作『ヘドローバ』を見に行った。

全員死刑』『実録・不良映画術』ですっかり心をぶっ殺われたのでとても楽しみにしていた。
渋谷についてから具合が悪くなったので帰ろうかとも思ったががんばって見た。
果たしてめちゃくちゃ元気になった!!!

あらすじとしては
健康を越えて不死身をスローガンにする謎の宗活セミナーを主催するババアとヤン兄弟の住む団地。3人は仲良し家族。今日もアホな信者達に変なもの売りさばいて楽しく暮らしています。
他には腰を患っているカタワ(作中の表現ママ)のヒロイン、そのヒロインと暮らす団地内清掃業の兄、脳をスマホにインストールした博士、歯医者のドラ息子などが出てきて、暴力漁業団体と戦ったり、お祭りでババアの誕生日祝ったり、ヘドロのバケモノと戦ったりします。

とにかくクソ最高の映画でした。
最初はスマホの撮影にしても音が聞きづらいなーとか、やばい兄弟は監督の好きな『殺し屋1』かなーとか、ババアが団地のボスって新しいなーとか色々考えながら見ていましたが、気がついたらグルーヴに乗って楽しく笑っていました。
『実録・不良映画術』の中で語られていた団地のエピソードや自分のおばあちゃんと仲がよかったこと、すごく弟思いなこと、親というものをあまりアテにしてないこと、保険証ないと病院行けないことなどなど今回も監督の人柄がよく出てて好きでした。

設定や展開はぶっ飛んでるけどそこに至る感情とか見せ方はとても理知的で頼もしいです。『全員死刑』もセリフが楽しい映画でしたが、ヘドローバもとてもゴキゲンでした。
「これは逆レイプじゃねぇ!私がしてんのはレイプだ!」「その通りでございますぅ…」のくだりとか好き。グルーヴが凄すぎて何いってんのかわからないところもありますが、『七人の侍』が聞こえづらさで面白くなくならないのと同じで最高です。

境界を越える描写を入れる、と前掲の不良映画術のなかでいってましたが、ウメモトジンギ演じるお兄ちゃんがヒロインをレイプする時にマンションのドアを押し開けるのとかそういうやつなんかなーと思った。そのあと一気にタバコをふかすカットに飛ぶのが気持ちよかった。
そのあと軽いPTSDでヒロインがゲロを吐くんだけど、しつこく3回も吐いてて笑うしかない。他にも歯医者の息子のいけすかないガキ(本当に滑舌とか顔つきとかがいい感じにイライラさせてくれる)をぶん殴るシーンでもゲロっていて最高。『ピッチパーフェクト』しかりゲロを吐く映画は面白いという法則にもあってる。

監督のフェチなのかヒロインとか敵のギャングの女の人のケツのナメの撮り方とかすごく肉感的でえっち。そもそもヒロインが白いタンクトップに白いショートパンツにチョーカーというのは清らかさの記号にしてもフェチがすぎる。反対にギャングの女は黒づくめだった。そう!衣装がいいんです。
セミナーの信者のおばさんがREJOICEとかWAVE Californiaとか入ったダルダルのシャツを着ててそれどこで買ったんだよ……と呆れずにはいられない。

あとヒロインのことをずっとカタワカタワ呼んでて、しまいにはそのヒロインが「全員カタワにしろ!」とあの狂い咲きサンダーロードのジンさんの名セリフを言ったり、3Dプリンターで作った銃ぶっぱなして「カイカン……!」とセーラー服と機関銃をやったり監督の映画愛がほとばしってた。
全員死刑』のドロちゃんもそうだし、今回のヒロインがカタワなのもそうだけど小林勇貴監督のまなざしは「愛は地球を救う」的なおギョウギのよさで現実をメッキするんじゃなくて、ホドロフスキーの映画にフリークスが必ず出てくるのにも似た生きている人間の肯定というか、現実の再認識として映画を作る時に都合のいい悪いを勝手に線引きして、この世にあるはずのものを排除したりしないからいいよなぁと思う。
その理論で言うと団地のボスが高齢女性というのも社会的には弱者とされてしまうのにおもろいなーと思った。

全編スマホ撮影の最大点は機動力で、カットを割るのではなくて長回しで動きまくってグルーヴを生んでいく手法は題材にも狭い団地や銭湯の湯気の中でも制約なく活躍しててよかった。
かといって絵が安いかというと全然そんなことはなく、ときおり入る鳥瞰構図は黒沢清ぽかったり、アリが這い回るカットはブニュエル?!と思ったりメリハリがあってよかった。

ここまで大事にとっといたけど中盤の銭湯での大乱闘シーンは、本当にヤバすぎて頭がおかしくなるかと思った。
まず男湯なのでみんな裸。みんなフルチン。ほとんどみんなモンモン入ってる。もちろんモザイクなんてない。
水しぶきをあげて殴り合う男たち!!!最高!!!
どんなに説明するより見た方が早い。
映画はその誕生の時から《見たことないものを見せる》見世物的な欲求に向き合うものだと思うが、この銭湯で大乱闘シーンはまさに見ちゃダメなものを見ちゃってるうううという驚きで脳が喜んでた。

小林勇貴監督は実際の不良を使うからリアリティがある、とよく言われるけどそれは微妙に違ってて本物の人を使えば本物に見える、実際に殴り合えば迫力あるアクションシーンが撮れるわけではない。
その理論で言うと人殺しの役はみんな人を殺さないと嘘になってしまうけど、実際には殺さずに殺した、怖いと思わせる技術が必要で、その技術こそが芸術だと思う。不良の人がキョロキョロしないくらいカメラ慣れしてるのに余計な力入ってなかったり、アクションシーン痛そうだけど気持ちよくスカッとしてて『全員死刑』のアクションとは差別化してあったり監督はすごい。
不良にしても地元の人にしても本当にみんな楽しそうにいい顔をしていて撮影現場の雰囲気のよさがよーく伝わってくる。監督の陽性のホスピタリティが伝播してるというか。
だからこそこの映画はヘドロのバケモノがでてくるヘンテコな映画ではなくて、男と女が愛を知る圧倒的なラブヂカラの映画なのだなーとさわやかな気持ちになった。

あとやっぱり音楽のなるタイミングと選曲が気持ちよくてアガる。『全員死刑』よりもヘドローバの方が音が好きで、1人で揺れたりビート刻んだりしてしまった。迷惑奴〜。

本編上映後のメイキング映像では監督がフルチンで銭湯のシーン撮影してて笑った。とても楽しそうなのにちゃんと安全には気をつけてた。



本編見終わって一番に拍手してて、恥ずかしいとかではなくて嬉しくて誇らしくなった。
場内は満席でよく笑い声が起こり(最初はこいつら笑いすぎだろと思ったけど次第に自分もゲラゲラしていた)、よい映画体験ができた。


ロビーには小林勇貴監督ご本人がおり、『実録・不良映画術』にサインしてもらった。
「クソ最高でした!!」というと「クソありがとうございます!」と返してくれる監督いい人。
「全員カタワにしろ!は狂い咲きですか?」「もちろんです!」というやりとりもあった。

握手してもらって(大きくて柔らかい手だった)、「これからもがんばってください!」といったあと
前にブログでおれがぶっ殺うんだよ!と書いてたことを思い出し、食い気味で「おれもがんばります!」と言えた。監督はびっくりしてた。
もちろん応援するけど人に頑張れっていう時いつもお前もな!って思うからこの気持ちはなくしたくない。

いつか監督の映画に出たいと思ったが本人を前にしたら軽々しく言えなかった。
僕の前にサインをもらってた綺麗なお姉さんが「出たいですー」っていった瞬間に、監督がその人をくっと見たのがすごく怖くて冗談めかすのはいやだなと思った。でも本当に監督の映画に出られたら過酷だと思うけどきっと幸せだと思うんだ。
役者冥利というか演じる演じない以前の被写体として楽しいと思う。

まだまだ書き足りない気がするなぁ。
リアルタイムでこんな映画を見られて東京に来たかいがあるぜよー。

ほいじゃ。