テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

『全員死刑』からの『実録・不良映画術』にぶっ殺われて

「ぶっ殺う!!!」
「わりぃっけ」

静岡の方言らしい。ぶっ殺うはぶっさらうと読み、ぶ、にアクセントが来る。意味としてはころすとかばらすとかけすというところか。
わりぃっけはわるいね、くらいの意味合いで『全員死刑』の劇中よく出てくる。

全員死刑』という映画を見てから『実録・不良映画術』という本を読み、小林勇貴監督にとても興味が出てしまった。
全員死刑』は実際にあった事件を元にした映画なので一応実録路線ではあるものの、エンターテインメントな味付けが凄いので楽しいことしか起こらない。人を殺すというシーンの説得力は妙に手堅いというか、もちろん殺してみたことはないのでそれらしいというのも変な話だけど、いちいち怖くて面白くてギャグなので笑ってしまう。
間宮祥太朗の面魂と毎熊克哉の小物感が見事だった。清水葉月ちゃんの生活感から立ち上がるエロさとか護あさなさんの弩級おっぱいとかもよかった。
あんまり他の人が褒めなさそうなところを書くと最初の犠牲者吉田ショウジ役の藤原季節さんが好きだった。この人を意識したのは『美しい星』の中でチャラい大学のミスコン実行委員がウザかったからである。長髪をくくって大学生役の橋本愛にしつこく絡むのが心底ウザい。その後DVDでみた『何者』では烏丸ギンジの劇団でなんかエモいこと言う役者の役でこれまたしゃらくさくてムカついたので完全に顔と名前を覚えた。
今回の『全員死刑』では金貸しの一家次男で、Youtuberといういけ好かない役どころがぴったりだった。髪の毛をやや結んでるのが洒落臭い。ビニールプールにカレールーを張ったデラックスカレープールなるものに入る様を動画に収めようとしているところに間宮祥太朗演じるタカノリがやってきてタオルで首を絞める。観ている側のイライラが解消されるのでとてもいい映画だなと思った。

全員死刑』が好きだなと思った瞬間はなんの前触れもなくタカノリくんの友達のドロちゃんが小人症の役者さんだったことで、これを見た瞬間にホドロフスキーの映画を思い出して最高じゃんと思った。
世の中にはそういう病気の人はいるのに、いないものとして映画を作る人は沢山いて、だけどホドロフスキーはそういう洒落臭いことをせずにたくさんそういう人が出てくるので好きだった。小林勇貴監督がどういう意図で出したのかは分かんないけど、ドロちゃんが棒を振り回してタカノリくんの後を着いてくるのを見た瞬間にいい映画だなと思った。
あとで調べたところ中村祐太郎という映画監督だった。
全員死刑』は面白い映画だけど『狂い咲きサンダーロード』とか『マッドマックスFR』見た時みたいな熱狂にはならなかった。まぁ実話ベースだしそこと比べるのも変な話なんだけど、でも作り手の狂気がビンビン伝わってくるのは同じで見たあとに「ぶっ殺う」「わりぃっけ」と口に出して遊んだ。『狂い咲き〜』見たあとは田んぼの真ん中で耕運機でも乗ってろよ百姓〜とか全員カタワにしろ!とか言いたくなったし、『MMFR』はもちろんV8しか言わない時期があった。

最近老成してきたのか偉そうなことをよく言ったり書いたりしてしまうのだけど、『全員死刑』を見て背中をバシッと叩かれたというか「これからも頑張ってほしい」みたいな洒落臭いことは死んでも言っちゃダメで、オレががんばるんだよ!オレがお前らぶっ殺うんだよ!という気持ちを今1度思い出した。なにしろ小林監督は27歳で僕より年上なので、なおのことオレもやらなくちゃという気分になる。
公開と同じタイミングで刊行された『実録・不良映画術』は小林監督の半自伝的映画製作の本で、読んでてめちゃくちゃ笑った。今年読んだ本で一番笑った。
不良になった弟のことを心配しながら不良と喧嘩してたりする地元時代も面白いが閉塞した田舎に嫌気がさしてる当たりは他人事とも思えず、気の合う友達と漫画読んだり映画見たりは素敵だなと思った。
東京に出てきて新文芸坐とか自分も同じようにいってる映画館にいったりと妙に共通点を見出してしまった。田舎から出てくる物語には妙に弱い。
ぼくは大学で映画研究部だったので映画を作るくだりで、マイクらしきものを作って役者たちをその気にさせたりする雰囲気作りに笑った。やりたいシーンやりたい展開をやる、というのが初期衝動に忠実で羨ましい。映研ではあったけどもっぱら役者に徹してたのと部長業に力を使い果たしたのでついぞ映画を撮ることはなく、大変そうだからとスルーしたのがもったいなかったなと今になって思う。社会人になっても映画撮ってる人はいるけど明らかにフットワークが違うし、惜しいことをしたなーと思った。
読み終えて一番に思ったことはおれも映画撮りてぇであったが、ヘタに知恵ばっかつけて頭でっかちになると出来ない理由ばかり探してしまうなーと情けない。
いつかいつかはいつまでもやらないからなーと思いつつ今は体調を戻そうと思う。

役者を続けてたら小林監督の作品にも出れるかもしれない。
もっぱら不良が出てくるのでぼくは狩られる側とか『全員死刑』の気弱なコンビニ店員とかになると思うけども。