テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

フェアリーゴッドマザーを待ちながら

ふとここ最近の靄の中にあった気持ちに名前が付けられそうなのでブログを書く。

連日の受付業務をこなす中で、僕の中に育っていく芽は、悔しいの一言で片付けるほど素直じゃない。
たとえば自分も舞台に立ちたかったとか、みんなは客出しでキラキラしてて楽しそうでいいなーとか、そういう気持ちも表面には浮かんでくるけど、でもそれは氷山の頭の方だけでもっと見えないところの気持ちを探っている。
たしかに舞台で照明を浴び、視線を浴び、拍手を浴びる興奮は何物にも代えがたい。稽古中ずーっとダメだしばっかりでやるせなくても客出しで大好きな友人に褒められれば天にも昇るくらい浮かれられるし、ああ僕はこの瞬間のために生きてきたんだなーと思える。
だけど、今回それにお預けを食らったわけで当然面白くはない。面白くないからって不貞腐れていられるほど僕は幼くない。
僕はシンデレラと自分を混同する。
フェアリーゴッドマザーがやってきて魔法の杖を振るうと、スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスな感じになってすべてが丸く収まる。かぼちゃは馬車になるし、ネズミは馬になるし、トカゲは御者になる。ぼろはふわりとしたドレスに変わるし、光り輝くガラスの靴で背筋がピンと伸びる。
シンデレラの元にフェアリーゴッドマザーが現れるのは、舞踏会の夜。それも継母やイジワルな姉たちが舞踏会へと出発して留守番を言いつけられたあとだ。
僕はまた灰をかぶりながら床を這いずる。
今夜はまだ舞踏会じゃない。
開戦前夜はいやに静かだ。
フェアリーゴッドマザーが来ないことを嘆くより、明日は来ると言い聞かすことを選ぶ。
明日来なけりゃそのまた明日。
僕のガラスのハートは12時の鐘を聞いてもそれを信じられる。
魔法は解けない。

シンデレラと自分を混同する僕は、まだ乙女が治っていない。