テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

音楽に起因するカイコ、チャットモンチー篇

チャットのアルバム、告白が発売されたのは2009年の3月4日らしい。
その頃の僕はといえば中2の終わりで幸か不幸か自分のことが天才に思えて仕方なかった時期である。
告白は白地に赤と青のシンプルなジャケットで、ヒラヒラヒラク秘密の扉とか風吹けば恋とかlast love letterとかタイアップがっつりで耳にすることの多い楽曲が目白押しだった。事実そういうかっけー曲が聞きたくて僕はこのアルバムを買ったのだけど、8cmのピンヒールってどのくらい走りにくいもんなんやろかーとか、夏休みの宿題なかなかやらなかった事とか高校受験に気持ちが切り替わらないこととか長い目で見てよと思いながら聞いたりしていた。

当時の僕はスクールオブロックという東京FMをキー局に22時から放送されるラジオに夢中だった。チャットも23時代の講師でそこでよくかかっていたから好きになった。好き、というのはやや語弊があるような気がする。アルバムまで買っていたけど情報を追っかけてたわけではなくて、僕はやはりそのラジオのレギュラーだったPerfumeが好きでラジオを聞いていてチャットはその同僚みたいな立ち位置であった。好きな女の子の親友と仲良くするテンションでチャットを聞いていたと言ってもいい。
チャットのなにがそんなに好きだったのか考えているが、女の子3人のバランス感みたいなのが好きなのかもしれん。
ほわほわしとるえっちゃんとイケボなあっこさんとしっかりしてて幕末に詳しい久美子さん。
当時の僕はチャットのさらば青春がラジオでかかる度に自分の卒業式にサプライズでアーティストがやってきたら……という妄想に耽っていた。きっと楽しいだろうなーとか、なんかふてくされて楽しくなさそうにしてしまうかなーとか。
結局妄想は妄想のまま終わるのだけどそういういたいけな思い出(あえて青春とは呼ばない)に似つかわしい音楽はチャットなのかなーと思う。YUIも捨て難いが、ここはやはりチャットなのだろう。

えっちゃんの声は冬の夜の外気みたいにピシッと力強くて、でも硝子の向こうに結露を起こさせるようなふしぎな力がある。結露は室温との兼ね合いでもあるが、とにかく内部に影響を強く及ぼす力がある。

結局僕がチャットを聴き込んだのは告白の1枚きりで、だからファンだとは間違っても名乗れないのだけどあの夜、ラジオから聞こえてくる歌声に勉強そっちのけで聞き入った季節は嘘じゃなかったと思う。
香りと同じように音楽もまた記憶に強く結びつく。
これからもギターをかき鳴らしていてほしい。

チャットの歌を聴いて眠れぬまま朝を迎えた日に記す。