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テラノハ

言葉は涙だ。とベケットは言った。

ワトニーメソッドを信じる

改めて『オデッセイ(原題:The Martian)』をみて泣いた。
この前のオールタイムベストには入れなかったけど、これからの人生で座右の映画にするならこれだと思う。

初めて見たのは公開当時なので2016年の2月。
その3月から東京に出てくるのだが、2016年はことある事にこの映画を、そしてこの映画の主人公マーク・ワトニーのことを思い出して暮らしていた。
僕が個人的に名付けた【ワトニーメソッド】は以下の通りである。

・テーマソングを決める
・頑張った日は好きなものを食べるもしくは多めに食べてよい
・どうしようもない日はひたすら寝る

これは概ね劇中のワトニーと後に読んだ原作小説のワトニーの生態から僕が参考にしているものである。ワトニー本人はこういうメソッドを名付けてるわけではなくて、火星で生き延びる必要性から体得していった。
火星と東京。比べるべくもないが、それでも未知の土地で日々を過ごす上で僕は心の師ワトニーのメソッドに従って生き延びてきた。
東京は火星よりも生命に優しいが、それでも僕のか細い気力体力では中々難儀する。調子がいい時はいいが、たまに心が折れかける。

今回何度も見た映画に泣かされたのは、心が弱ってる時というのもあるけど更なる発見があったからである。
今作は徹底して内省がない。
正確にはモノローグという形で主人公は悩まない。必ず外に出す形で(それは往々にしてハブとよばれる基地の至るところにあるカメラへの記録であったり、地球との交信であったり)、現状と向き合う。
そこに惹かれる。
火星に一人ぼっちであっても必ず語りかける(対象はほぼモニターの自分)ことで彼は狂気と無縁でいられる。
このことに気づいたのはデカい。
家に引きこもっているとまったく会話しないから、次第次第にフォーカスが自分の中にしか合わなくなってしんどくなる。
ブログという形で内面を外部化できるのはある意味でありがたい。
もっと言うならカメラで日記をつければいいのかもしれないが、そこまではまだ大丈夫。

あとワトニー1人のためにたくさんお金が使われることを誰も咎めないのがすごく嬉しかった。勝手に投影してしまって高等遊民の後暗さをも認めてもらえたような気がするから。

大事なのはミッションを遂行することではなくて、生きること。生き延びること。生きて帰ってくること。

母さん、うち、この星で生きていくけん。